「あした色の恋歌日記」「物件探偵」「夜の底は柔らかな幻」「制服のころ、君に恋した。」「富士山うたごよみ」「めくってびっくり短歌絵本」「うたにあわせてあいうえお」「アンティーク・シオンの小さなきせき」

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「あした色の恋歌日記」 大槻凉湖(おおつき りょうこ)

内容(「BOOK」データベースより)

心のままに記した15歳から25歳までの恋の日記。

☆☆☆

万葉とか古今、新古今から、テーマに沿った歌を一種選び、自分の思い(生活観や経験)を綴った作品。当たり前だが等身大であり、失恋も含めて恋する日々の日記。短歌に親しむという意味も含めて、若い子が読むのにはいいかもしれない。

思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを(小野小町・「古今」)

桜咲くひと月遅れのひな祭り花吹雪ほどの涙あつめて(大槻凉湖)

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「物件探偵」乾くるみ(いぬい くるみ)

内容紹介

不動産の間取り図には、あなたの知らない究極のミステリが潜んでいる。利回り12%の老朽マンション!? ひと りでに録画がスタートする怪現象アパート? 新幹線の座席が残置された部屋??――そんなアヤシイ物件の謎、解けますか? 『イニシエーション・ラブ』で日本中をまんまと騙した作家が、不動産に絶対欺されないコツを教えます。大家さんも間取りウォッチャーも興奮の超実用的ミステリ!

☆☆☆

6編からなる短編集。超常現象というかスリラーものではなく、純粋な探偵もの。それぞれに間取りや物件の説明がありそれを見るのも楽しい。足音や家具の移動の謎もあれば、所有者の謎もある。それに加えて、業界用語の説明や常識と思っていることの間違いの指摘などもなかなか面白い。勉強にもなる作品。

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夜の底は柔らかな幻(上)」恩田陸(おんだ りく)

内容(「BOOK」データベースより)

国家権力の及ばぬ途鎖国。特殊能力を持つ在色者である実邦は、身分を隠して途鎖に入国した。闇月といわれる時期、途鎖では多くの者がある目的をもって山深くを目指すが、実邦の周囲にも不穏な空気が満ちる。謎の殺人者、恩師が残したメッセージ、隠された過去の悲劇…。そしてついに創造と破壊の幕が切って落とされる!

☆☆☆☆

ワクワクドキドキしながら読んだ。上下に分かれているが、上巻は特殊能力を持つ者たちがどんどん集まってくる様子やそれぞれの再会や邂逅など、場所は収斂するが、登場人物はどんどん増えていく。提示されている謎をどう回収するか下巻が楽しみだ。

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夜の底は柔らかな幻(下)」恩田陸(おんだ りく)

内容(「BOOK」データベースより)

復讐を胸に途鎖に入った実邦だが、前後して恩師の屋島風塵、入国管理官の葛城、葛城の旧友で快楽殺人者の青柳など、関係者がいっせいに闇月の山を目指しだした。犯罪者たちの頂点に君臨する神山―実邦の元夫と、山奥に隠された宝を巡って、彼らの闘いが始まる。圧倒的スケールのエンターテインメント巨編。

☆☆

途中まで読んで、残りのページでどうまとめるのか不安になった。残念ながらその不安が的中し、何が何やら分からないラストであり、頭の中に?がたくさん登場した。実に多くの謎が提示された挙句、謎解きがないという結末で、実に残念。ひょっとしてまだ続くのかな。でも広げすぎた風呂敷だとしてもきちんとたたんでほしいなと思った。

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「制服のころ、君に恋した。」折原みと(おりはら みと)

内容(「BOOK」データベースより)

28歳の養護教諭・奈帆は、高校時代にシンタという彼を亡くした過去があった。10年経っても喪失感から抜け出せない彼女の前に、「彼」が突然現れる。10年前の想いと真実。失ったものは取り戻せるのか?110万人が泣いた『時の輝き』の著者から、制服のころを過ごしてきたすべての人に贈る、奇跡の物語。

☆☆☆

よくあるようなノスタルジックな話。思い出は美しいものだし、しかも亡くなった人への思いは最強なので、無敵な設定での話だった。でも、この話では、今どきの高校生は、付き合い始めると、いつ手をつなぐか、いつキスをするか、いつ体験をするかと、そういう具体的な行為をどうクリアするかという思いと実際の行動も描かれていて、ああそうなんだって隔世の感もあった。この話の落としどころは予想通りで、結末も予定調和だった。まあ初老の人のひねた感想より今の若者はもっと純粋に描かれた世界にはまるんだろうなと思った。そんな作品。

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「富士山うたごよみ俵万智(たわら まち)

内容・福音館書店より

奇想天外な絵、みずみずしい感性の短歌と文からなる画期的な絵本です。日本人の心の故郷である富士山をモチーフに、立春大暑秋分冬至などの「二十四節気」という古来、中国から伝わってきた暦の順で、不思議なコラボレーションが演じられ、日本文化の美的伝統が感じられます。家庭では季節のこよみとして使えるように工夫しています。子どもから大人まで幅広く日本の四季を楽しめる一冊です。

☆☆☆

児童コーナーで見つけた本。子供向け。二十四節季ごとの歌が載っており、富士というより季節感あふれる本だった。既読の作品も多かったが、はやり俵万智さんはすごいなあって改めて思った。子供向けとしても十分伝わる、何かを感じられる作品ばかりだった。

サ行音ふるわすように降る雨のなか 遠ざかりゆく君の傘

落ち葉踏む音を比べて歩く道 しゃかしゃかはりり しゅかしゅかぱりり

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「めくってびっくり短歌絵本1「そこにいますか 日常の短歌」」穂村弘(ほむら ひろし)編 西村敏雄(にしむら としお)絵

内容(「BOOK」データベースより)

短歌は、五・七・五・七・七の三十一音からなる短い歌です。日々のふとしたことがらを短歌で楽しみましょう。日常の短歌を十四首収録。

☆☆☆

児童コーナーで見つけた本。子供向け。「1」は日常ということで、よく見る風景、見逃している風景を集めた作品。面白かった。

手を触れてよろしいですか撫でさすりしてよろしいですかそこにいますか 早坂類

街をゆき子供の傍を通るとき蜜柑の香せり冬がまた来る 木下利玄

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「めくってびっくり短歌絵本2「サキサキ オノマトペの短歌」」穂村弘(ほむら ひろし)編 高畠那生(たかはた なお)絵

内容(「BOOK」データベースより)

短歌は、五・七・五・七・七の三十一音からなる短い歌です。オノマトペは「さくさく」「ぴたり」など、音や状態をあらわす言葉。オノマトペの短歌を十四首収録。

☆☆☆

児童コーナーで見つけた本。子供向け。「2」はオノマトペということで、擬音を集めてある。音で世界が広がるなあと、その音しかないという音を短歌に取り入れる技術に感心した。

君かへす朝の舗石(しきいし)さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ 北原白秋

白菜が赤帯しめて店先にうっふんうっふん肩を並べる 俵万智

たとえば君ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか 河野裕子

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「めくってびっくり短歌絵本3「君になりたい 恋の短歌」」穂村弘(ほむら ひろし)編 後藤貴志(ごとう たかし)絵

内容(「BOOK」データベースより)

短歌は、五・七・五・七・七の三十一音からなる短い歌です。平安時代の昔から、短歌はラブレターとして詠まれてきました。恋の短歌を十四首収録。

☆☆☆

児童コーナーで見つけた本。子供向け。「3」は恋ということで、切ないものが多いが、きっとこんな感じだったんだろうと思う。直球で素直なだけに余計心に響いた。

はい、あたし生まれ変わったら君になりたいくらいに君が好きです 岡崎裕美子

観覧車回れよ回れ想ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ) 栗木京子

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「めくってびっくり短歌絵本5「納豆の大ドンブリ 家族の短歌」」穂村弘(ほむら ひろし)編 寺門孝之(てらかど たかゆき)絵

内容(「BOOK」データベースより)

短歌は、五・七・五・七・七の三十一音からなる短い歌です。家族への思いがこめられた短歌を味わいましょう。家族の短歌を十四首収録。

☆☆☆

児童コーナーで見つけた本。子供向け。「5」は家族ということで、親子や兄弟が多い。ふと自分の家族、小さかった頃のことを思い出した。懐かしくていい作品。

星座盤回す縁側弟の日焼けの肩はまだらに剥けて 五十嵐きよ

妹の小さき歩みいそがせて千代紙買いに行く月夜かな 木下利玄

春ものの衣類をたたむわたくしの頭上はるかを母がまたいだ 早坂類

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工藤直子詩集 うたにあわせて あいうえお (美しい日本の詩歌)」工藤直子(くどう なおこ)

内容(「MARC」データベースより)

元気の出る詩、ウィッティな詩、人間の生と死をみつめる詩など、教科書にも数多く採用されて、子どもたちに愛されている工藤直子の詩の数々。リズミカルでリリカルなここちよい作品集。

☆☆☆

児童コーナーで見つけた本。子供向け。教科書で紹介されているとのこと。難しい言葉もあれば平易な言葉もあり、文字面からの印象も計算されているなあと感じた。確かに心地いい作品だった。

 痛い

すきになる ということは

心を ちぎってあげるのか

だから こんなに痛いのか

 だれですか

そこにいる

あなたは だれですか

あなたは わたしですか

わたしをみる わたしですか

わたしにみられる わたしですか

そこにいる

わたしは だれですか

 猫よ

猫よ

また春がきた

おまえが いなくなってからも

春は きちんとやってくる

猫よ

おまえのいない わたしの春は

みんなのところに くる春と

すこしちがう気がするのだけれど

わたしが いなくなっても

春はいつも

だれかのところへ いくのだろうね

おまえとわたしの いない春の空には

どんな風が吹いているのだろうね

猫よ

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「アンティーク・シオンの小さなきせき」茂市久美子(もいち くみこ)(著)、黒井健(イラスト)

内容(「BOOK」データベースより)

森の中のお店、アンティーク・シオン。アンティークとは、誰かの使った古い品物のこと。店のご主人シオンさんが世界各地で出会った品物です。ここで起こる、不思議で心あたたまる6つのお話。物にはみな、持ち主との忘れられない物語があるのです。

☆☆☆

6話からなる短編集。子供から進められて読んだ本。静かで温かくてほっこりする話。森の中の店に来た人が骨董品との出会い、そのことで奇蹟が起きたり、様々な人と巡り合ったりと、不思議な日常が始まる。作品設定での謎がまだ多いので続編があるのかもしれない。子供向けだけにメルヘンチックではあるが、夢を感じる内容で、楽しく読めた。

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